
遺産相続事件や、離婚事件の財産分与などで、「不動産の価値」が争点になることがよくあります。
たとえば遺産相続において、相続人が長男・長女の2人だけで法定相続分が2分の1ずつの場合、遺産が預金2000万円だけだったら、それぞれ1000万円ずつ相続するのでトラブルになりにくいですよね。
ところが、遺産が預金2000万円と自宅土地建物だった場合、自宅土地建物の価値をどう見るかで争いが起こりやすいのです。
不動産の価値には、固定資産評価額(=固定資産税の課税のために市役所が決める価格)、相続税路線価(=相続税の課税のために国税局が決める価格)、市場価格(=実勢価格。実際に市場で取引される価格)など、様々な価格があり、金額が異なります。
裁判所で不動産の価格が争点となる場合、原則として「市場価格(実勢価格)」で算定することになります。
これがまた裁判が長引く理由の一つでして、市場価格って、固定資産評価額のように書類で一律に決まっているわけではありません。不動産業者の査定書が一つの証拠にはなるものの、不動産業者によって価格に差があるため、裁判で争いとなります。
最終的には不動産鑑定士による「鑑定」が行われることもありますが、鑑定には一筆数十万円の費用がかかることが通常ですし、鑑定の期間も数か月かかることがあるので、裁判の高額化や長期化の原因となることもあります。
ですので、離婚事件にせよ、遺産相続トラブルにせよ、不動産があるかどうかで事件の解決までにかかる時間は大きく変わることがあるんです。
執筆者:弁護士中井陽一 投稿日:2025年1月21日